
最近、「相続放棄をする」という人が本当に増えているとTVやニュースで耳にしています。
不動産の仕事をしていると、その波を肌で感じることが実際にありました。
今日は、私が実際に経験した賃貸物件での相続放棄の話をさせていただきたいと思います。
ある日、管理している物件の入居者様である高齢のお父様が亡くなられました。

葬儀も終わり、私はご家族と今後の契約やお部屋の整理についてお話しするため、息子さんに連絡をしました。
ところが、その息子さんから返ってきた言葉は、
「相続放棄の手続き中のため、こちらでは撤去できません。」
というものでした。
相続放棄をされたら、誰が片付けるの?
正直、その瞬間「え?どうすればいいの・・・?」と頭が???になりました。
賃貸契約はお父様とのもの。
でも、お部屋の中には家財道具がそのまま残っています。
通常であれば相続人が退去手続きをして、荷物を片付け、原状回復を行うのですが、相続放棄をされ
ると、その責任をだれが負うのかが非常に曖昧になります。
相続放棄=すべて無関係、ではない
実は、相続放棄をしても「何の関係もなくなる」わけではありません。
家庭裁判所で正式に手続きが完了するまでの間は、相続人には「管理義務」が残ります。
つまり、放置してはいけない財産や契約に対して、最低限の対応を求められることもあるのです。
しかし、現実的にはその説明が十分に伝わっておらず、「放棄したから関係ないです」と思い込んで
しまう方も少なくありません。
現場で感じた「誰も引き取れない不動産や契約」の増加
このケースのように、相続放棄によって行き場を失う不動産や契約が増えています。
家財道具が残ったままの部屋、名義人が亡くなっても動かせない土地。
管理者としても、「誰に相談すればいいのか」「どこまで片付けていいのか」と迷う場面が多くなり
ました。入居者であるお父様が契約されていた、固定電話の解約も管理会社からの申請ではできず、
相続人である息子さんからの申請が必要でした。しかし、相続放棄をしたという息子さんとは連絡が
つかなくなり、解約手続きを進めることができなくなりました。
息子さんに連絡がつかないため、お父様のご兄弟に連絡を取らせていただきましたが、法定相続人の
相続順位としては、息子さんが第1順位となるのです。
今回の出来事で、「相続放棄」は個人だけの問題ではないと強く感じました。
亡くなった後の契約や財産をどうするかは、家族や関係者、そして不動産業者にも影響します。
もし身近に不動産を持つご家族がいるなら、「万が一のとき、どうするか?」を話し合っておくこと
が本当に大切です。
「相続放棄します」という言葉の裏には、金銭的な負担・心の整理・現実的な管理の難しさ、色々な
事情が詰まっています。
不動産業をしていると、「放棄=終わり」ではなく、「そこからが始まり」という現実を感じること
が多いです。誰もこまらないようにするためにも、早めの話し合いと、専門家への相談が欠かせない
と改めて実感しました。



